立憲的改憲という提案の重要な柱の1つ、
憲法裁判所の創設。
意外と消極的な意見が多いようだ。
例えば元内閣法制局長官、阪田雅裕氏。
山尾志桜里衆院議員と次のようなやり取りをしている
(『立憲的改憲』)。
阪田
「日本の裁判所は、国会が国権の最高機関である
ということ、我々は民意を反映していないのだという
ことをすごく謙虚に受け止めて、今まで憲法判断に
踏み込むことは極力避けてきたのではないでしょうか。
憲法解釈に争いがある場合にどれを選択するかは、
やはり民意に委ねるべきだということです」
山尾
「憲法裁判所には、政策選択の是非を聞くわけではなく、
その政策を取るとするならば、憲法改正の必要があるか
否かを問うわけです。
これが民主主義に反するとは思わないのですが」
阪田
「憲法裁判所をつくるとしても憲法改正を要するわけです。
憲法裁判所に代えて、人事も含めた最高裁のありようを
変える方が早道なのかもしれません」
山尾
「最高裁人事を内閣の指名・任命から独立させるとすれば、
いずれにしても憲法改正事項になりますね」
なお、憲法学者で九州大学大学院准教授の井上武史氏は、
憲法裁判所創設を前向きに評価されている(同書)。
「(海外では)憲法裁判所は
『多数者に対する自由の守護者』
という姿勢を前面に出し、『人権を守った』
という輝かしい判決によって信頼を高め、
制度の定着を見ています。
憲法裁判所は今や現代型憲法の標準装備になりつつある
といっていい。
立憲主義を貫徹しようとするのであればなおさらです。
現在の日本の最高裁判所は、制度上の制約で基本的には
人権分野でしか憲法判断をすることができません。
『人権』と『統治』という憲法全体の規範からすると、
半面しか合憲性の統制が利いていないということになり
ます。
…憲法秩序の全体について合憲性を保つことができるため、
多くの国は憲法裁判所を置いています」